■■■■■■■■ 「プロジェクト学習」とは? ■■■■■■■■

{この内容は、1999文部時報(文部省発行)に掲載された鈴木敏恵の 「愛で未来教育!プロジェクト学習&ポートフォリオ評価」をさらに詳しく説明したものです。}

生きる力ではなく、「生きる心」こそ
 生きていくために必要な力とはなんだろう。
基礎的、基本的知識? 情報スキル?  語学力? 専門的知識?どれも大切だ、あるに越したことはない。しかしそれらが、すべて備わっていても、生きていけるというものでもない。もし、はじめから人生に対してやる気がなかったり、人と話したり、意見や考えを交換することが出来なかったり、自分では何も意見も考えもなく、何ひとつ決断することが出来ない・・というようなことであれば、一人前の仕事も出来ないだろうし、自分の人生を生きている大人とはいえない。
 生きていくために必要なのは、学力でも能力でも技能でも資格でもない、まずは、 「生きて行くぞ、」という前向きな心だ。それは責任感であったり、自分を大切にする気持ちであったり、人の心や考えを認めながら生きていく姿勢であったり、何かイヤなことや困ったことが起きた時に、逃げたいと感じながらも逃げない選択だ。
 必要なのは、「自分の生き方を真剣に考える気持ち」「生きていくために自分自身に力を付けたいという気持ち」「自分の夢や願いを叶えたいという志」「目の前に問 題や障害が生じた際の対処法や身のこなし」「問題を解決する力」「判断力、決断力 」「状況や考えを説明できる力」「創造力」「気持ちや考えの伝える力」「作品や自分をプレゼンテーションする力」だ。
 もちろん、これらをすべて完璧に備える人などいない。もって生まれた才能やセンスもあるだろう、また逆に、才能があるのに周囲をつまらなく気にしすぎて自らの力を封じ込めている人も少なくない。しかし大概は、学習や訓練を積むことや、優れた人の所作を倣うこと、「知恵を共有」したり、実際に「経験」してみることで身に付くものだ。
 ここに「プロジェクト学習」が活きる、プロジェクト学習は、知識量や 暗記力などを問う学習とは、根本的に異なるものだ。

プロジェクト学習は、"夢の叶え方"
 いま時代へ先端的な仕掛けを投げかけようとする人々の口から必ず飛び出す表現が 、この「プロジェクト」という表現だ。「プロジェクト」という言葉は、共有を意味する「シェア(共有)」と並んで、米国教育界のキーワードともなっている。それは 、すでに定型化した仕事や作業の一部ではなく、ある目的を果たすための構想や計画全般を指す。日本でも「総合的な学習の時間」にフットする学習として広まりつつある。
 <プロジェクト>という言葉は、ある目的を果たすための「構想」や「計画全般」 を指す。それは、1人で出来るものではなく、「組んでやる他の存在」と、その目的に至る「フェーズ(局面・段階)」の上に成り立つ「一定の継続的な時間」が要る。
 これを学校における「総合的な学習の時間/プロジェクト学習」に置き換えると、 次のような視点が必要となる。
 <テーマ>の設定をどうするか?。
   教科書の存在がない<プロジェクト学習>。テーマは、誰かが与えてくれるものではない、自分で考え、探し出すものである。それは、子ども達みんなが一年間掛けて向かう船の行き先、目的地となる。そのプロセスで、子ども達が確かな力を身に着け 、成長していく。そのようなシーンをいかに登場させるか、そこに教師のセンスが光る。
 <プロジェクトリーダー>は、誰か?
   リーダーは、子ども達によるプロジェクトチームのメンバーが担う。それはフェーズごとの判断や方向を決めていく大切な役割である。また、どの段階で、どうテクノロジー(コンピュータ&ネットワーク)やスキルを持った人を活かすか、というようなことを考えるのも大切な仕事である。
 <フェーズ(局面、段階)>を想定する。
   教師には、起こり得るであろう、”先を見る能力”が要る。そして、解決のために は、「どんなリサーチが必要か?」「それは、どう調べればいいか?」「さらに適切な情報を得るため、専門家に会って話しを聞くことが必要か、」「そのアポイントメントは、誰がするか?」あるいは「インターネットで情報収集するか?」「それをどう集計するか?、どんなやり方でするか?」等々起こり得る局面をイメージし事前に手を打ち、極力スムーズにプロジェクトが進行するようにする。
 <成果(作品)>を出す  そしてフェーズごとに、出された成果を次のフェーズに続けながら、ゴールへ達す る。その<最終成果(作品)>は、「インターネット上にのせる」、「レポートにま とめる」あるいは、「コミュニティー」や「その道の専門家」や「役所」へプレゼンテーションするなどがあり得る。

■■■■■■■■■■ 情報テクノロジー ■■■■■■■■■■  

情報リサーチ】 プロジェクト進行のためには、まず<新鮮で適切な情報やデータ>が欠かせない。 それは、<広域的>に入手することでより確実性が増す。ここにインターネットは大きな役割を果たす。  さらにフィールド取材やインタビューの際にも、また現場の写真記録、それを即座 に発信する時にも、デジタルカメラ、モバイルコンピュータなど新しいメディアは、 必須の道具だ。

テレコラボレーション】  プロジェクト学習は、教室の外の人々と一緒に進めることも多い。ここにネットワ ークが活きる。例えば適切な機関から、専門的な意見をメールで寄せてもらう、また 同じテーマで学ぶ地域や海外の学校などと<パートナー>を組み、Web上に共同で作 品を作る。さらにテレビ会議システムで互いの顔を見ながら、ライブで考えを出し合 うなど、マルチメディアの活用はいろいろだ。コンピュータもインターネットも通信 システムもこの未来的な学習になくてはならない存在だ。

プレゼンテーション&インターネット】  プロジェクト学習の成果を、地域の人々や専門家の前でプレゼンテーションする、 あるいは、それをインターネットで公開することによりまた素晴らしい効果を上げることができる。

1.いろいろな手段の「プレゼンテーション」を経験することで、コミュニケーションスキルが向上する。

2.作品を見た人の反響や感想が寄せられることで、「やる気/モチベーション」がアップする。

3.まったく予想していなかった色々な意見が寄せられ、「いろいろな考え」が世の中にあることを知る。

4.「正解は、ひとつでない」という、この世の真理に気づく。

5.より多くの人が見、評価、人々の知恵や意見が積み重なり成果は、より良いものに「進化する」

6.それが、ネットワークでつながるコンピュータディスプレーで「ビジュアルで共有」出来ることで、 「思考は深化し、進化する」。

7.世界の人々の「知の共有」そして「新しい知の創造」が適う。

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